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前書きという名の後書き



第二作目のSSでございます。

さて、今回のテーマは「食と信仰」です。
ここで言う信仰とは、「神や仏を敬う」といった大層なものではなく、「感謝する気持ち」も含まれています。

あなたは食事をするときに感謝をしていますか?

今の私たちには飢餓というものが遠すぎて、そのありがたみが実感できないのではないでしょうか?
そしてそれは良いことであり、悪いことでもあるのです、きっと。
技術の発展もまた然りなのです。
「古きことこそ善」ではなくとも、何か大切なモノを置き去りにしてしまっているかもしれない……そう考える瞬間が現代人には必

要なんじゃないかと考えます。

それをこんな形で書くなって言われるかもしれませんがね^^;

天候不順で野菜の値段が高騰している今なら、あるいはそのありがたさや自然の偉大さが実感できるかもしれませんね。



秋色幻想郷


季節は秋――山々は赤や黄色に彩られ、人間の里では収穫祭が行われていた。
この祭りは里の農家が総出で行っていたものだが、それは記録ばかりの物となっている。
この行事の主役となる、豊穣の神である秋穣子とその姉の秋静葉、この二柱の前に座るのは10人ばかりの人間だった。

「――今年の奉納でございます」

里の代表が今年の収穫状況を報告し、奉納品である秋野菜や果物を二柱に差し出す。
この役目もかつては”本来の”里の代表が行っていたものだったが、今年も一農家の若者がその任に就いていた。

「それでは、今年も豊作ということで間違いないのね?」

穣子は奉納品を認め、その青年に問う。
その量は博麗霊夢や霧雨魔理沙が異変解決に東奔西走してた時代の20%にも満たない。
だが、彼の口から不作や凶作の二文字は出なかった。
これが何を意味するか――それは、ただ単純に祭りの参加者が減少したことを示していた。

「はい。今年も穣子様のおかげで、我々は安泰でございます」

青年が恭しく礼を述べると、周りの者もそれに倣った。
穣子はそれを満足そうに見ている――いや、そう見えるように振る舞った。
その様子を見ている静葉は、心穏やかではいられなかった。



「今年も終わったわね」

静葉が運んでいた奉納品をおろしながら言った。
その隣では穣子も同じように奉納品をおろしており、姉の言葉に疲れたような笑顔を向けた。

元々あの収穫祭は里の人間が発案したもので、この姉妹はそこに呼ばれていたに過ぎない。
ヒトは神を信仰し、神はヒトに恩恵をもたらす。
つまり、その恩恵に与るべく”豊穣の神”である穣子に参加を乞うていたのだ。
だが、それもやはり過去の話となりつつある。

「これも時代の流れなのよ、きっと」

穣子は寂しそうな表情で奉納品を見る。
彼女たちは”それ”を欲しているわけではないが、それが言わば信仰の量に比例しているのも事実である。
信仰がなければ神は弱体化し、その力を振るうことができなくなる。
それは里の人間にとっては不都合なことである。
――いや、不都合であった。

「技術が発展するのは良いことなのよね」

妹の言葉に、静葉は自分を納得させるように呟く。
人間たちの農作技術は、かつてとは比べ物にならないほど発達していた。
交配による進化した作物、効果的な肥料や農薬の開発、長期間食料を保存できる倉庫。
さらに、養鶏や養牛の普及による食卓事情の変化。
これらが人々の意識を変えた。

天候や季節にほとんど関係なく、安定した食糧を生産・供給できるようになったのだ。
飢えの恐怖や苦しみから解放された人々の心からは、いつしか信仰心が消えていった。
それは自然な流れであり、誰にも非はなく、止めることなどできない。
だからこそ、この季節になると穣子と静葉は浮かばれない気持ちになってしまう。
たくさんの笑顔と笑い声と感謝に溢れた収穫祭は、もう完全に過去の産物となってしまったのだ。

「作物は稔れど、心は豊かにならず――なんてね」

穣子は微笑んだ――それは、今にも消え入りそうな微笑みだった。

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2010.04.25 Sun l 東方SS l COM(0) TB(0) l top ▲

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